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2016.10.23

『あなたの年金が、危ない!?』

こんにちは。平木だいさくです。

臨時国会の開幕から、早くも1か月が経とうとしています。

TPPを巡る攻防が話題となっていますが、今国会の隠れたテーマと言えるのが年金。

公明党の主張から実現に向けて動き出した年金の受給資格期間短縮法案や、継続審議となっている年金改革法案も審議入りを控えており、既に活発な質疑が行われています。

このこと自体は歓迎すべきなのですが、野党側の質問は、ことさら不安をあおるものが多く、残念なものになってしまっています。

争点はいくつかあるのですが、今日はその中でも年金財源の運用を巡る議論についてご紹介しましょう。

昨年の11月13日、とある新聞記事が大きな話題となりました。

『年金積立金“ギャンブル化” 世界同時株安で損失一時「8兆円」』(毎日新聞夕刊)

無謀な運用が失敗しているという刺激的な見出しです。

報道番組などでもこの件について、年金受給世代の方にマイクを向けて感想を求め

「私の年金が減るなんて許せない!」

といったコメントが数多く散見されました。

そして今夏の参院選。

民進党が全面掲載した新聞広告には、大きな文字で

「あなたの年金が、危ない」

これだけ言われると、さすがに心配になりますよね。

まずは事実関係を整理しましょう。

政府は2年前の2014年10月、年金積立金について、それまでの国内債券に偏重した運用をやめ、国内外の株式へ、より資金を振り向ける変更を行いました。

この変更には、大きく言って3つの意義があります。

まず第一に、年金積立金を運用する上での目的を果たすための変更であったということです。

先程、年金受給世代の方が運用損に憤っているという話を紹介しましたが、実は積立金の運用とは、現在の高齢者のために行うものではありません。

積立金とは、年金制度を将来に継承していくために、現在支え手となっている現役世代や、将来世代の年金原資を確保することをその目的としています。

最新の試算では、積立金の本格的な取り崩しが始まるのは2040年以降とされており、この時までに、いかにして財源を充実させられるかが問われているのです。

つまり、金利のつかない国内債券ばかり保有して、今後四半世紀もの間、事実上運用を停止してしまうことは、本来の制度趣旨に反します。

第二に、分散投資の効用があります。

世間には、「債券は安全で、株式は危険」といった認識が流布していますが、これは正しくありません。

債券も時々刻々価格が変動しますし、元本が返ってこないリスクもあります。

その上で、運用のプロの世界では、資金を債券だけ、株式だけといった具合に一種類の商品で運用するより、上手に分散させることで、リスクを抑えながらリターンが改善できることが知られています。

2年前の運用方針見直しも、こうした運用の常道に則ったものと言えます。

そして最後に、金利上昇リスクを低減させる必要がありました。

先ほども、債券運用は必ずしも安全ではないという趣旨のことを書きましたが、債券価格と金利はコインの裏表の関係にあり、金利が上昇すると価格は必ず下がります。

そして金利水準が低ければ低いほど、債券価格の振れ幅は大きくなるのです。

これを現在の日本の超低金利な市場環境と併せて考えた時、従来の運用方針のままでは、一旦金利上昇局面に入ると、ジェットコースターのように価格が下落し、損失を大きく膨らませてしまう可能性が専門家から指摘されていました。

試算によれば、従来のままの運用を続けていた場合、仮に長期金利が1%上昇しただけで約5.9兆円の損失。

運用方針の変更は、同じだけ金利が上がった際の損失を約2.3兆円も減らすことができており、リスク管理上極めて重要な措置と言えます。

少し専門的な議論になりましたが、いずれもプロの世界では当たり前の事柄ばかり。

一方で、テレビの前で国会中継を見守る多くの有権者は、こうした専門知識を持ち合わせてはいません。

これを逆手にとって、不安をあおるパフォーマンスは断じて許すことはできませんが、政府の答弁にも改善の余地は大きいように感じます。

複雑で難しいからと言って諦めるのでなく、初めて聞く方にも、どれだけ問題の本質を伝え、安心につなげられるか。

私たちが議会で行う質問は、一字一句、残らず議事録に記録されています。

同時代の方たちに、わかりやすく伝えることに妥協なく取り組むとともに、次の時代の方たちに、決して恥ずることない議論に、これからも挑戦して参ります。