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2012.12.10

飲料業界の挑戦

先週も沢山の企業を訪問させて頂きました。景気に関する意見交換や現場でのご苦労を伺う中で、特に印象に残ったのが飲料販売の会社です。実は経営コンサルタントをしていた時、飲料業界のプロジェクトに参画したことがあり、もともと興味を持っていた分野でした。

我々が普段、当たり前のように使っている自販機。駅前、オフィス、商店街、道路脇など至る所にあって、いつでもどこでも喉の渇きを潤してくれます。しかし、世界中でこんな便利な国は日本以外にありません。海外では、破壊や盗難の恐れがあるため、屋外に自販機が設置されることはまずないからです。

自販機はまた、災害時にも強い味方になってくれます。公園など、公共性の高い場所に設置してある自販機には、断水などの緊急時に無料で飲料を提供する機能を持つものが増えています。対応機には「災害時救援対応」のような記載がありますので、是非一度近隣の自販機で確認されることをお勧めします。

ところで皆さんは、自販機の売上げを伸ばすのに最も効果的な方法をご存知でしょうか?答えは、意外かもしれませんが、表面塗装の塗り直しです。同じロケーションで、同じ飲料を提供していても、塗装が新しくなるだけで売上げが1~2割伸びることもあります。キレイな自販機には、人を惹き付ける力があるのです。そして機械自体を新しくすると、その効果が更に大きいことが知られています。

最近では、タッチパネル式の最新型自販機を見かけることも増えてきました。この新しい機械には、見た目の良さ以上に、小売りのあり方を大きく変える可能性があると、私は見ています。中に入っているのは、これまで通りの飲料ですが、ネットに接続されたタッチパネルには、常時飲料のイメージを表示しておく必然性はありません。

例えば、飲料を販売する時以外は、広告の媒体として使うことができそうです。一歩進めて、バーチャルストアとしての活用も考えられます。オフィスを出る時に、自販機のタッチパネルでスーパーを呼び出してお惣菜を発注すれば、帰宅した時には自宅まで配送が完了。配送先の指定や決済は、短距離無線を搭載したスマホをかざすだけ。同様の仕組みが、既にお隣の韓国では始まっています。

実はこれまで、飲料メーカーにとって自販機は最も利幅の取れる販売チャネルでした。スーパーやドラッグストアのような値下げ競争の波が及ばなかったためです。ところが、長引くデフレの影響から、遂に自販機でも価格競争が始まり、飲料業界は今、岐路に立たされています。

各企業は、厳しい競争を勝ち抜くために、ご紹介したようなイノベーションに挑戦を続けています。しかしながら、需給ギャップに起因するデフレ・スパイラルを抜け出すには、企業の努力だけではどうにもなりません。今こそ、政治の出番。政治の機能不全を解消し、新しい政権で十分な経済対策を打つためにも、決戦の16日まで全力で頑張って参ります!

(写真はJR市川駅構内の最新型自販機。以前は飲料メーカーごとに自販機を運用していましたが、今や複数のメーカーから売れ筋商品をミックスするのがあたり前。品揃えがコンビニに似てきています)