平和安全法制②『ずれたままの憲法論議』
こんにちは。平木だいさくです。
今、私の手元には、7月11日(土)付けの朝日新聞朝刊の記事があります。
タイトルは『安保法制アンケート「違憲」104人「合憲」2人』。
記事を読むと、回答があった憲法学者122人のうち、85%にあたる104人が平和安全法制を「違憲」と表明しています。
この調査は、朝日新聞が独自に憲法学者209人を対象に実施したものなのですが、対象者の選定に特徴があります。
それは、憲法を学ぶ際に必ず傍において参照する『憲法判例百選』で解説を書いた学者のみを調査対象とした点です。
つまり、権威ある判例集を執筆した、まさに“日本を代表する”憲法学者の大多数が、法案に“ノー”を突きつけていることがわかります。
これは確かに気になりますよね。
そこで今日は、平和安全法制に関する憲法論議について、解説したいと思います。
早速、どのような指摘がなされているのかを、具体的に見てみましょう。
これまでに憲法学者の皆様から寄せられた意見は、おおよそ次のようなものです。
「集団的自衛権の行使が許されるとした点は憲法違反だ」
「違憲だ。集団的自衛権は、仲間の国を助けるために海外へ戦争に行くことだ」
「他国防衛のための、海外派兵を本質とする集団的自衛権行使はできない」
これらの意見について、皆さんはどう思われますか?
いずれも、本法案について述べているようでいて、実は集団的自衛権そのものの合憲性を議論してしまっていることにお気づきでしょうか。
フルサイズの集団的自衛権行使の議論として考えれば、現行憲法下で許されないとは、これまで公明党が主張してきたことそのものであり、私も何の違和感もありません。
但し、本法案について議論するのであれば、フルサイズの集団的自衛権を論じても、全く意味がありません。
この法案で提起するのは、他国に対する武力攻撃を起点としながらも、その目的は自国防衛に限定した自衛権行使のあり方であり、まさに個別と集団が交わる領域の日本の安全保障です。
その意味で、個別的自衛権と集団的自衛権のどちらかに分別して合憲・違憲を論じる、二元論に固執してきた憲法学会の議論は、実際に両者を切り分けるのが困難になってきた昨今の安全保障環境の変化に、全く対応できていないと言わざるをえません。
そして、安全保障をめぐる憲法論議がずれてしまっているのは、この点に止まらないというのが、今日のポイントです。
冒頭に紹介した朝日新聞のアンケート調査に戻りたいと思います。
前述の紙面とは別に、この調査について紹介した朝日新聞『電子版』の記事が私の手元にあります。
同じタイトル、同じ内容だと思って読み進めていくと、最後に3行だけ『電子版』にしかない記述が見つかります。
実は朝日新聞は、平和安全法制の他に、自衛隊そのものの合憲性についても調査を行っており、その結果が記されています。
記事によれば、なんと前述の学者のうち自衛隊を「憲法違反」とした人が50人、「憲法違反の可能性がある」と回答した人が27人もいます。
つまり、日本を代表する憲法学者の実に63%が、自衛隊の存在自体について憲法違反の疑いありとしているのです。
自衛隊そのものを「違憲」と断ずる方たちに、その役割を拡充する法案の賛否を問えば、当然“ノー”という答えが返ってくることは自明の理です。
私たち政治家には、既に発足から60年以上が経過し、国内外から高い評価を得ている自衛隊を、ただ「憲法違反」と批判したまま放置しておく無責任は許されません。
これから参議院で始まる審議においても、こうした点をしっかりと踏まえながら、精緻でわかりやすい憲法論議を展開したいと思います。
それにしても、多くの方の目にふれる新聞紙面において、『電子版』にあった3行の記述は、なぜ削られてしまったのでしょうか。
法案の更なる理解促進のためにも、メディアには、是非とも公正中立な報道をお願いしたいと思います。